ドナルド・トランプの間違い

大統領選挙に参加している不動産王のドナルド・トランプ氏(Donald Trump)が先日、彼の移民地位の文書を発表しました。移民はアメリカ人の仕事を横取りして、福祉を乱用し、アメリカ人の賃金を下げているといった話でしたが、彼のキャラクターからこの発言に誰も驚きもしなかった事でしょう。

彼の発表で間違っていた部分を移民政策アナリストのDavid Bier氏が指摘する興味深い文章がありましたので、紹介してみたいと思います。

誤った発表#1:アメリカにいる「移民の割合が史上最高である」

この主張は、真実とはほど遠いです。今日の移民率 (新しい永住者の米国の人口に対する割合)は、過去平均の半分で、しかも記録的な数字を残した20世紀初期の4分の1にしか満たされません。移民数の割合は増えつつありますが、それは前代未聞の移民の増加が原因ではなく、アメリカ人の空前の少子化により、移民の割合が増えているように見えています。

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誤った発表#2:「外国人労働者の流入は、アメリカの賃金を下げている」

新しい労働者が通常より高かったときに、所得すなわち賃金も高い割合で上昇しました。 1981年から33年間、1981年以前に比べて、新しい労働者の伸びははるかに低いレベルになっています。それにより、賃金の増加も低いレベルになっています。労働力が増加すると賃金が下落するというのは事実ではありません。

誤った発表#3:「賃金をあげ、10代の若者を仕事に就かせるためにも、アメリカは低収入の移民の入国をコントロールする必要がある」

トランプの議論は、高校の学歴のない移民は所得を停滞させ、高卒のアメリカ人から低レベルの仕事を奪い、高校生の年のアメリカ人を無職に追い込んでいます。

1981年から大卒の学歴を持たない労働者の数は、移民・アメリカ人共に減少傾向にあります。1981年以降はその割合は16%しかなく、それ以前より34%減少しています。つもり、そういう仕事の競争率はアメリカ人の失業率と直接な関係が見られません。そもそもが、高卒やそれ以下の労働者の割合が30年前に比べて少なくなっています。

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誤った発表#4:「H-1Bビザは、失業を増加させる」

以下の表で示しているように、Computer関連の仕事ではH-1Bは失業率とまったく無関係です。もし、アメリカ人を雇わない代わりにH-1bビザの移民を雇っていた場合、H-1bの労働者が増えるのに合わせて失業者が増えるはずですが、真逆となっているので、この業種ではステータスに関係なく雇用を行っているということになります。

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参照元サイト: The leading immigration law publisher

Green card(永住権)手続きの改正

2015年9月9日、国務省(DOS)は、米国移民局(USCIS)に提出される移民ビザの処理に影響を与える、申請手続きの劇的な調整を発表しました。
この改正は、Priority dateの待ち時間が長い人たちにとって、これまでと比べると大変好ましい方向に作用することになります。

<<今までのGreen card申請>>=========
まず従来のプロセスを説明すると、雇用でGreen Cardを申請する場合、まずI-140という書類を移民局に出します。それが受理された日をPriority Dateと呼び、これが順番待ちの日にちとなります。
Green Cardを取得するために最終的にはI-485という書類を提出しなければなりませんが、それが出せるようになるのが自分のPriority Dateに順番が回ってきた時となるわけです。この順番は、移民局から発表されることになっています。

そもそもこのPriority dateが何を意味しているかというと、アメリカでは毎年Green cardを交付してよいとされている移民の人数が決まっています。つまり、Priority dateが回ってきた人たちは、その年に交付してよい人数のうちに入っている人たちということになります。
実際カードを受け取るまでにはまだ少し時間がかかりますが、もうGreen cardを取得したのと同じような状態です。

Priority dateを待っている間、他のビザ(たとえば、労働ビザH-1Bなど)を維持し続けなければなりませんが、こうして順番が回ってきた申請者は、I-485を提出後Green Cardを取得するまでの間、労働許可や渡航許可を申請することができます。
但しここで注意しなければならないのが、もし子供が一緒に申請している場合、I-485を提出するまでに子供が21歳を超えてしまうと、その子供は申請ができなくなります(Aged Out)。また、雇用されている会社がそれまでに倒産してしまったというような場合も申請不可となってしまいます。

<<改正後のGreen card申請>>=========
では、今回の改正で一体何が変わるかと言いますと、Green cardを交付できる人数に達していない段階(従来で言うPriority dateが来ていない状態)で、I-485を提出する事ができるようになり、且つこれまでと同じく労働許可・渡航許可を申請する事ができます。
その出せるタイミングは、移民局から発表されますが、実際に交付可となる日より確実に早く提出ができます。

<<改正後の利点>>=========
長々と説明させて頂きましたが、要するに、今回の改正によって、前述した「子供が21歳を超えてしまう」とか「会社が倒産・・・」などといった問題を回避しやすく、またビザを維持し続けなければならない期間が短縮されるという大きな利点があるわけです。

現時点でGreen Cardの申請の処理は、史上稀を見ない速さで進められていますが、オバマ大統領の任期が終われば、つい1年程前にそうだったように5~6年待ちに戻るだろうとの予想です。
そうなれば、より一層今回の改正が多くの申請者にとって有難いものになる事でしょう。

毎年のGreen Cardを出せる数は移民法によって数を制限されており、オバマ大統領としてもそれを増やすことができませんが、この改正は彼の権限内で行われ、2015年10月から実行に移されます。尚、この改正は家族ベースの申請にも適用されます。

移民局のPriority Dateを発表しているチャートをビザブリテン(visa bulletin)と呼びますが、この見方は次のブログ更新時に紹介してみたいと思います。